研究

機能材料とプロセス開発で水素エネルギー活用に貢献する

水素は再生可能エネルギーなどの様々な一次エネルギーから製造でき、燃料電池などから電気や熱のエネルギーを効率よく取り出せます。また、二次エネルギーとして大量輸送・長期貯蔵が可能です。常温・常圧では気体で存在するため、貯蔵に膨大な体積が必要になります。そこで、化学物質に変換して液体状にしたり、水素原子として物質中に吸蔵させ固体状にしたりすることでコンパクトに水素を貯蔵できます。
これらの水素貯蔵に関わる物質を材料科学に基づいてナノスケールで制御して開発しています。また水素エネルギー利用システムは、水素製造やエネルギー取り出し方法の組み合わせが様々あり、水素貯蔵に必要な機能やプロセスが違ってきます。各用途に合わせたエネルギー効率の高い水素貯蔵・供給プロセスの提案やそのために必要な貯蔵材料、貯蔵容器開発を目指しています。

マグネシウム

水素貯蔵材料の中でマグネシウムは資源が豊富で安価な材料であり、マグネシウム水素化物(MgH2)を形成して高容量の水素(7.6 mass%、109 kgH2 m−3)を貯蔵する材料です。表面が不活性なため水素吸蔵・放出反応速度が遅いのですが、適切な触媒をナノメートルレベルで分散させることにより反応速度を改善しました[14]。また、MgH2の水素吸蔵・放出時の体積変化および微粉化に対応する構造として、耐熱性と柔軟性を併せ持つカーボンナノチューブ(CNT)の3 次元スポンジ状膜に、触媒を添加したMgH2 粒子を保持させたMgH2 -CNT 複合体を作製しています[49]。さらに、水素が気体中で最も高い熱伝導率を持つことに着目し、このMgH2 -CNT 複合体を平行に並べ低温/高温の水素をタンク内部に流通させて水素の吸蔵/放出を行う方法を新たに提案し、実験/計算の両面から評価を行っています[44, 55]。

MgH2-Nb2O5-CNT複合体の作製プロセス[49]

水素を熱媒体とするMgH2シートタンク[44]

現在の主なテーマ
・水素を熱媒体としたMgH2タンク開発と燃料電池/水電解との統合システムの設計
・サイクル耐久性を有するMgH2-カーボンナノチューブ複合体膜の空気中での作製プロセスの確立
・アーク放電を用いたMgナノ粒子のフロー合成プロセス開発

水素吸蔵合金

水素吸蔵合金のLaNi5は定置用の水素貯蔵タンクとしての応用が進められています。合金は粉末で、水素吸蔵放出時には25%程度の体積膨張収縮によって微粉化が起こります。合金をタンクに搭載する場合、微粉化に伴いタンク内での充填状態が変化し水素や熱の供給が不均一となり、水素吸蔵放出特性の低下につながります。そこで、LaNi5粒子を樹脂で結着したLaNi5-樹脂複合体ペレットを作製し、高い水素吸蔵放出特性とペレットの形状維持を実現しました。ペレットの熱伝導特性評価も行っています。高い体積水素密度を維持しつつ熱伝導性に優れる合金構造体や合金タンク設計を進めています。

LaNi5-樹脂ペレット


現在の主なテーマ
・高速水素吸蔵・放出のための水素吸蔵合金-高分子-膨張化黒鉛構造体の開発
・水素吸蔵合金とMOFの複合化による高容量水素貯蔵材料の開発

液体アンモニア

アンモニアは17.3 mass%の質量水素密度を持ち、室温で約1.0 MPaで液化し108 kgH2/ m−3の高い体積水素密度を持っているエネルギーキャリアです。我々は、電気分解によるアンモニアからの水素取り出しに注目しています。アンモニア水溶液中のアンモニアの電気分解[43]、液体アンモニアの電気分解[25, 51]を主に進めています。どちらも、窒素放出のアノード反応の過電圧が高いため電極触媒を開発しています。また、電極触媒表面積増加のために、カーボンナノチューブ(CNT)膜の3次元スポンジ構造に金属ナノ粒子を担持したMetal-CNT膜電極も開発しています。低過電圧での電流密度向上ためのファラデー効率の改善やゼロギャップセルの設計なども進めています。

Pt-CNT電極[43]

アンモニア水溶液のアノード電解特性(Pt-CNT電極)[43]

液体アンモニアのアノード電解特性(各種金属板)[51]

現在の主なテーマ
・液体アンモニア電気分解のカソード反応機構および電流効率・電流密度の向上
・Ru担持カーボンナノチューブ膜電極による水素生成のための液体アンモニア電気分解
・Ir担持カーボンナノチューブ膜電極による水溶液系でのアンモニアの電気分解
・水溶液系でのアンモニア電気分解における一体型セルの開発

その他の研究

エネルギー材料やエネルギープロセスに関するその他の研究も進めています。

現在の主なテーマ
・CO2固定のための炭酸塩水溶液を用いた電解による含窒素有機化合物の合成
・無機塩を添加した低蒸気圧液体アンモニアの電気分解による水素生成
・CO2吸収剤としての共晶三元炭酸塩を添加したMgOのCO2吸収性能評価